作品概要
《狂気について瞑想する人物》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1928年から1928年で、個人蔵に所蔵されている。

男が首を前に突き出し目の前にある白いテーブルのようなものをじっと見つめている。その手にはタバコを持っている。マグリットの他の作品にもあるように、男、タバコ、白いテーブル、といったどこにでもあるものが描かれている。しかし白いテーブルの上には何も存在しない。では彼はいったい何を見つめているのだろう。
一見するとそれだけの絵に見えてしまうのだが、タイトル『狂気について瞑想する人物』によると、彼は狂気について瞑想していることになる。『狂気』自体は見えるものではないが、何かを感じ取って『瞑想』しているのであろう。瞑想というのはただじっと見るだけではなく心を無にして深く思いを巡らせることから彼は我々には見えない何かについて深く考えているのであろう。面白いのはこの絵をX線にかけたところ、彼の目線の先にはこの男を見つめているもう一人の男が描かれていたという。
しかしマグリットはその男を塗りつぶしてしまったので空間しか残されていない作品となったらしい。消されてしまった男はもしかしたらこの男の瞑想の中の自分だったのかもしれない。みえない自分自身をあたかも見えるように見つめる、それが狂気であったのだろうか。
見るもののイマジネーションは無限に膨らんでいく。実際にこの作品の前に立ち絵を観察すると塗りつぶされた男の顔の輪郭がうっすらとみえてくるそうである。マグリットのお得意の技法であるイメージの除去は、本当はそこになにが存在するのか、それは普遍的なイメージなのか、あなたが見ているものは真実なのか、見るものを混乱に陥れるのである。
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