作品概要
《山高帽の男》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1964年から1964年で、シモン・ウィザーズ・スワン蔵に所蔵されている。

主題
1964年に描かれた彼の著名な作品、《人の子》と同じく山高帽をかぶった男性が描かれている。前者ほど有名ではないがマグリットらしい作品のひとつである。
細かくよく見ていくと、まるで写真を撮ろうとしたら鳥が男性の顔の前に飛んで来たというようなタイミングである。男性の左から右へ、つまりあかりの方へと飛び立っていく鳥の顔と目は描かれているが、男性の顔の表情を一番読み取れる部分が全て隠れてしまっている。まるであなたの想像におまかせしますと言わんばかりだ。
《人の子》との差異
《人の子》で描かれた男性と同じようだが実はこちらはネクタイの色が異なるしクローズアップである、そして顔全体が隠れてしまっているという違いがみられる。鳥を見るためには男の顔を見る事ができなくなってしまう。
しかしそこに隠されたものへの人間の好奇心というものは避けられないものである。見えるものがあるのに見る事ができないというその葛藤をマグリットは『山高帽の男』をはじめ幾つかの作品で取り上げている。
マグリットによる評
ではこの山高帽をかぶせた男性は何を象徴しているのであろうか。
「登場人物の無名性は、ぼくの作品にとって、どうやら不可欠の条件らしいのである」とマグリットが述べているように、その時代このような男性はどこにでも存在していたのであろう。実際にマグリットも山高帽を好んで装っていたらしい。
つまりマグリットの要素である日常的なモチーフ、どこにでもいる男性に違和感をもたせ見るものに現実を改めて問いただすといった作品の一つであると言える。
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