作品概要
《ピレネの城》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1959年から1961年で、イスラエル美術館に所蔵されている。

トルツイナーによる依頼
《ピレネの城》はマグリットの大親友で国際弁護士で詩人、作家でもあるハリー・トルツイナーに依頼された描いたものである。作品が出来上がるまでの二人のやり取りは1991年にイスラエル美術館から出版された書簡集にみられる。
マグリットの仕事ではあるがテーマを選択するに当たってトルツイナーは意見を求められた。そしてマグリットの何枚かのラフスケッチの中から城の乗っかった巨大な岩を選び、さらにマグリット特有の青い空と雲、下には波の押し寄せる海を追加してもらうよう求めた。
トルツイナーは海から浮かび上がる希望の岩をイメージしていたようだ。
主題
しかしマグリットが実際に描いたのは重量感のあるゴツゴツした岩と激しく押し寄せる波と力強い海、そこにぽっかりと浮かび上がる岩とそれと同じ色調の城。
いつものようにマグリットが扱う題材はどこにでもある海や空、そして岩であって、我々がいつもどこかで目にしているものである。それらがキャンバス上で収める理論上矛盾を含む位置や存在がマグリットの不思議感を高めている。
不思議な絵ではあるが、その絶対的な圧倒感から、もしかしたら世界のどこかにこんな天空の城が存在するのではないか、と強い印象を見る者に与える。
マグリットによる評
マグリットは、本作品に対して、「どのようにして頂上の城に入ることができるのだろうか?山へ入る入口もない。海からも陸からも登ることができない。空や想像力によってのみ入ることができる」と見るものの想像力を最大限駆使するよう求めている。
この作品のファンは多く、アーティストMr.Childrenの『優しい歌』のジャケットにも使用された。
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