作品概要
《傑作もしくは水平線の神秘》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1955年から1955年で、個人蔵に所蔵されている。

山高帽をかぶった同じような格好の紳士が3人描かれている。どこか広い空間で時間はちょうど黄昏時。そしてこの3人は同じ空間と時間を共有しているがそれぞれが違った方向を向いて異なる現実を生きている。そしてそれぞれの頭上にはやはり同じような三日月が見られる。それぞれの空間がどこで始まってどこで終わるのか判断が難しい。
この山高帽の紳士であるが1926年の『孤独な散歩者の夢想』以来マグリットの作品に描かれている事が多くみられる。マグリット自身も山高帽を気に入っていたようで写真が数多く残っているらしい。ここでは3人が描かれているが彼らは同一の人格を表現している。シュールレアリズムには驚き、予期せぬ不合理な要素が存在するが、マグリットはその要素からは往々にして距離をおき独自のスタイルを作り上げている。
アーチストがどんなに真実を忠実にキャンバスに写し取ろうとしても、実はそれは真実に見えるものを描いているだけで果たして真実は何かと。個人の頭の中の概念は実際は一般概念とは異なるのかもしれない。だから自分が見えているものが実はそのものの本来の姿ではないかもしれない。そういう意味ではマグリットのこの作品に見られる驚きと不合理の要素はシュールレアリズムといえるのかもしれない。
この作品はマグリットの中でも明確に彼のスタイルを表していると言っていいだろう。60年代にはとても人気があり一般にもポスターやカバーとして使用された作品の一つである。
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