作品概要
《隠修士の祭壇画》は、画家のヒエロニムス・ボスによって制作された作品。制作年は1493年から1493年で、アカデミア美術館(ヴェネツィア)に所蔵されている。

《隠修士の祭壇画》は、木製パネルによる三連式祭壇画である。それぞれのパネルには、異なる隠修士が苦境の中で祈りを捧げている。
図像解説
中央パネルには聖ヒエロニムスだ。聖ヒエロニムスは、聖書をラテン語に翻訳した神学者である。枢機卿帽を脱ぎ、荒れ地にひざまずき、十字架のキリスト像に祈っている。祭壇のように作られた場所は、壊れた礼拝堂にあるローマの石棺に似ている。レリーフはユディトとホロフェルネス(精神の勝利の象徴)、騎士とユニコーン、純潔の象徴などをテーマに扱っている。聖ヒエロニムスの持物であるライオンが水を飲んでいる姿が確認できる。
左パネルは、聖アントニウスだ。彼はエジプトで生を受け、隠遁者として砂漠で苦行に耐えた人物である。闇の中で火が燃えている。裸身の女が聖アントニウスを誘惑したり、悪魔があちこちに巣食ったりしている。瓶からワインを注いでいる魚の形態をとった悪魔、祈祷書を読む悪魔、クジャクの羽根のようなしっぽを生やした悪魔と、悪魔の描き方にもボスの発想の豊かさがうかがえる。
右パネルには、聖アエギディウスが描かれている。彼は、鍛冶屋、乞食の守護聖人として崇拝されている。洞窟の前でアカシカのかえありに矢を受けたとされた説をテーマに取っている。
火災に遭った絵画
本作は火災に遭い、特に中央パネルが損傷している。空、風景、聖ヒエロニムスの頭部は塗り直している。年輪年代学の分析で、1493年の作だと断定された。
《聖女の殉教》と同じく、16世紀前半にはベネチアの貴族グリマーニに所有されていた。
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