作品概要
《愚者の船》は、画家のヒエロニムス・ボスによって制作された作品。制作年は1490年から1500年で、ルーヴル美術館に所蔵されている。

《愚者の船》は、後期ゴシックを代表する画家ヒエロニムス・ボス(1450-1516)が1490年から1500年にかけて制作された油彩画である。
堕落した聖職者
小舟に修道士、2人の尼僧をはじめ、農民、道化師たちが乗って、飲食にふけり大騒ぎをしている。宴を繰り広げる愚者たちが、同乗した船はどこへ向かうのか。とくに目を引くのは、中央にいる修道士とリュートを弾く尼僧で、信仰を忘れて大口をあけて歌っている。もしかすると、目の前にぶら下がるパンを食べようとしているのかもしれない。堕落した聖職者に対してボスは常に痛烈な批判の目を持っている。
皿にあるチェリーは、中世以来、好色の象徴となっている。マストに磔にされている鶏か何かの肉片をナイフで切り取ろうとする者、嘔吐している者が、「大食」を表していることは明らかだ。マストの先の木にはフクロウがいる。枝にのって酒を飲む者は、この集団が愚者の集まりであることをはっきり示している。
影響を受けた可能性のある作品
16世紀に広く読まれた諷刺文学であるセバスティアン・ブラントの『阿呆船』(1494年)との関連も指摘されている。だが、直接の影響を受けているかどうかは定かではない。愚者たちが小舟に乗っていく当てもなくさまよう姿はブラントと同じ風刺精神がうかがえる。
また、最近の研究では、《愚者の船》、《快楽と大食いの寓意》、《守銭奴の死》、《旅人(放蕩息子)》はもともと同じ祭壇画を構成していたという事実が明らかになってきた。大きさは現在、切り取られて、オリジナルの長さの3分の2になっている。
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