作品概要
《海を見下ろしながら》は、画家のフアン・グリスによって制作された作品。制作年は1921年から1921年で、個人に所蔵されている。

《海を見下ろしながら》はキュービストの静物画に描かれる典型的なアイテムである、ボウルに盛られた果物、グラス、瓶、新聞が、青い海や遠くの丘のある海の景色に対して描かれている。
絵の構成
戦前のキュービズムの空間を浅く見せる手法を離れ、グリスは自然主義またはキアロスロを使わずに、前景と遠い背景要素を平面に共存させる試みをここで行っている。
絵の面に平行に垂れ下がるカーテンと、右側の突き出た角度のある窓枠との関係を支持する明確な理屈は見当たらない。グラスの堅さは、模式的に描かれた瓶と、キャンパスにコラージュされた、切り絵のように見えるブドウによって表現されている。しかしイメージは微妙に韻を踏む形と、パレットで注意深く調整された青と緑を使用することによってまとめられている。
創作の背景
《海を見下ろしながら》はグリスと妻のジョゼットが医師の助言を受けて、パリの冬の寒さと湿気を避けるために訪れたフランスのトゥーロン近郊の小さな港のあるリゾート地、バンド―ルで描かれた。
グリスの町に対する最初の印象は複雑だった。
「太陽は素晴らしが、風景は邪悪だ。
海、山々は全て美しいが、なんて悲しげなんだ!
気温はとても心地よいが、明るい日差しの中でここの田舎は陰気くさい。」
フアンとジョゼッタ・グリスは湾を見下ろすテラス付きの部屋を借り、グリスは屋根裏部屋で絵を描いた。
彼はアパートの暗さと外の光のコントラスト、そしてやや憂鬱な感じのする田舎に敏感ではあったが、すぐに創作に取り掛かった。
最初の作品は、アシスタントとして働いていた若い男の子を含む地元の人々の石版である。しかし、彼はすぐに《海を見下ろしながら》や、他のバンドルの湾の前に静物や建築物を盛り込んだマリンフォーマットの絵画に取り組み始めた。
1月15日に、彼は友人でディーラーであるダニエル-ヘンリー・カーンワイラーに「現在描いている絵はうまく構成されており、色のコントラストは以前よりも柔らかい。それらはさらに繊細で色が薄いが、今の色の進み具合から言うと私はこの方が好きだ。」と書き送っている。
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