作品概要
《去る者(連作魂の状態より)》は、画家のウンベルト・ボッチョーニによって制作された作品。制作年は1911年から1911年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

《去る者》はウンベルト・ボッチョーニによって1911年に制作された油彩画で、連作〈魂の状態〉全3点のうちの1点である。この作品は現在ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。
制作の経緯
1911年の前半にパリを訪れたボッチョーニは詩人アポリネールと出会う。ボッチョーニはアポリネールに現在構想している絵画について語った。それがこの〈魂の状態〉の原型であるが、その時点では2枚からなる連作だったようだ。3枚構成になったのがいつかははっきりしないが、1911年5月29日に行われた講演会で、「制作中の三部作」について言及している。
ボッチョーニはこの講演会で連作〈魂の状態〉について、「未来派の広大な本質と無限の可能性」を明らかにするものであり、「キュビスムの硬直した様式から脱却して、宇宙的なダイナミズムを包括する域にまで達した」絵画であると誇らしげに宣言している。
作品
画面左下の青い斜めの線は、《別れ》の場面から出発した列車の動きを表している。列車の煙と暴力的にさえ感じられるスピードに乗って遠ざかっていく車内の5人の人物の顔は、孤独と不安に沈んでいる。そのことは青い線や人物の沈んだ色調によって表されている。
一方、画面の奥には車窓から見える風景が描かれている。それは通り過ぎる一瞬を表すために、ばらばらに分解されて描かれている。風景の色調は暖かく、そこから去り行く人々の暗い色調と対比されている。
この連作は伝統的な西洋絵画の三連祭壇画にたいするアンチテーゼとして、中央に《別れ》、左に《去る者》、右に《留まる者》という並びで展示されたようだ。
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