作品概要
《山と川の風景(朝)》は、画家のカスパー・ダーヴィト・フリードリヒによって制作された作品。制作年は1830年から1835年で、カッセル美術館に所蔵されている。

精神を吹き込んだ風景画
無限の経験を捉えようとした画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒは、鑑賞者に立ち向かう素晴らしい作品を描いた。フリードリヒは、伝統的には重要とみなされていなかった風景画というジャンルを選択し、深い宗教的、精神的意味を作品に吹き込んだ。自然界の威厳は神の壮大さを反映するに過ぎないと信じ、神聖な美しい力を伝えるために、太陽のある景色や霧の広がりを特徴とした絵画を制作した。
制作の背景
1830年、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒは、ロシアの王位継承者であるアレクサンドル2世によって依頼され、4つの作品を制作した。透明紙に描かれた作品は、暗い部屋で背後から明かりを受けることで、音楽に添える装飾として鑑賞されたのではないかと思われる。
この4つの作品は1835年にサンクトペテルブルクにて展示されたが、残念ながら今は失われている。しかしカッセル美術館に、類似の作品が残っている。1枚の透明紙の両面に描かれた、《山と川の風景》である。正しく光で照らされると、一方の面は朝の場面を描いた作品、もう一つの面は同じ場所の夜の場面を描いた作品であることが明らかになる。
朝と夜の風景
描かれているのは、おそらくドレスデン近郊のエルベ川の風景である。画像の対で形成された朝と夜という一日の時間は、ここでは絵の両面によって統一されている。朝の側では、朝霧の太陽に向かって3人の人物がボートに乗っている。夜の方にもボート内に人がいるが、背景には、彼らが向かう目的地として町が描かれている。 満月の光で照らされた数多くの塔を挟むように、両岸には同じ高さの山が迫っている。
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