作品概要
《困難な航海》は、画家のルネ・マグリットによって制作された作品。制作年は1926年から1926年で、個人蔵に所蔵されている。

この作品は1926年マグリットのシュルレアリスム初期に描かれたものと、1963年に描かれたものと2作品存在し、どちらも個人が所有している。
1926年版には興味深い要素が多様に織り込まれ、マグリットの作品でお馴染みのものも多い。
右手にある剣玉か手すりのように見えるものはチェスのビショップのようだ。これは1926年の「ロストジョッキー」で初めて描かれ、ほかの作品でも木や植物のような無機質な役割を果たしているようだが、今回の作品では擬人化されて目を表している。
もう一つの共通的な要素は窓と絵画の曖昧さである。部屋の奥には雷雨とボートが見え、見ているものにこれが絵なのか、窓の外の景色なのか疑問を投げかけている。マグリットは彼の別の作品の中で、この人間の条件として外の絵と窓、そして重なって両方がある状態を浄化させ、別のレベルへ持っていっている。
駒の近くにあるテーブルの上には手とそれがつかむ赤い鳥。そしてテーブルの脚は人間の足となっている。
1963年版の場合は、多くの要素が変わり、なくなっている。室内ではなく、屋外に移動し、テーブルや鳥をつかんだ手も消えて、絵か窓かあいまいだった荒々しい海の情景が画面一面になっている。フロント付近の低いレンガの壁の背後に剣玉と正面に頭用の眼球を持つスーツ姿が見られる。
ここでも、眼球を持つものが人なのか、それとも別の剣玉なのかあいまいさを持たせている。1929年の「出会い」のような作品でも剣玉がいくつか描かれ、似たような眼球頭がでてくる。しかし、体をスーツが覆う姿には特に指摘はされていない。もしこれがスーツを着た男であれば、これは眼球が顔を覆う彼の自画像なのかもしれない。彼の顔を別の物で覆うという行為はよく彼の作品でも用いられ、「人の子」がよい例だ。
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