作品概要
《モーツァルトへ捧ぐ》は、画家のラウル・デュフィによって制作された作品。制作年は1913年から1915?年で、オルブライト・ノックス美術館に所蔵されている。

フランスで音楽一家の次男として生まれたデュフィは音楽をテーマとして描いた作品が多数ある。その中の一つにこの《モーツァルトに捧ぐ》があり、音楽が作品から聞こえてくるような感覚にさせる魅力を持つ。社会や生活の明るい側面を描き「生きる喜び」を表現してきたデュフィであるが美術評論家のギヨーム・アポリネールに「不遇にして偉大なる画家」と評されたように、その本質が見過ごされ芸術家としての評価が重んじられなかったことも事実である。
自分らしさを探していた時代
《モーツァルトへ捧ぐ》はそんなデュフィの不遇時代の作品とも言えるかもしれない。1904年にアンリ・マティスの作品に影響を受け、作品に鮮やかな色彩を取り入れるようになった。更にはキュビズムにも影響を受けたが、画商たちからはただの真似事にすぎないと評価を下され絵も全く売れなかった。なかなか自分の作風を確立できず試行錯誤を繰り返すも、1920年代以降には確固たる作風を築き上げることとなる。
キュビズムを取り入れた作品
キュビズムは見た物を一つの視点からだけでなく色々な角度から見た形を一つの作品に収めるという一点透視図法を否定した現代美術の動向であるが、《モーツァルトへ捧ぐ》にもこの方法がとられている。
前景にあるモーツアルトと書かれた石膏像、バイオリン、ピアノの奥には窓や楽譜などがキュビズムでえがかれている。後に「色彩の解放」と謳って大胆な輪郭線と鮮やかな色彩へと移行していくが、まだこの作品には多くの画家がとる技法を選択していることがわかる。
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