作品概要
《退廃芸術家の自画像》は、画家のオスカー・ココシュカによって制作された作品。制作年は1937年から1937年で、スコットランド現代美術館に所蔵されている。
ナチスへの抵抗
1937年、友人の1人がオスカー・ココシュカから1枚の自画像を預けられた。それまでにココシュカは膨大な量の自画像を数年にわたって描き続け、他のモデルと同じくらいに自分自身の内的な世界を熱心に探っていた。「《退廃芸術家の自画像》は自分の視点だけに頼った。それこそが私という存在をすべてかけた表現方法であり、そのようにしか自分を表現することはできないからだ」
《退廃芸術家の自画像》の制作中、ココシュカは自分の作品の数点がナチスの「退廃芸術展」に含まれていることを知った。退廃芸術展とは、近代美術がクラシック様式の伝統の品位を落とす退廃した美術であることを世間に広めるために、ナチスがミュンヘンで開いた展示会だった。
ココシュカは《退廃芸術家の自画像》の絵を修正することにし、腕の位置を変え、それに合わせて題名も別の名前にした。他のものと違ってこの作品では彼が厳しくこわばった表情でまっすぐに鑑賞者を見返している。両腕を組んでいるが、これは近代美術を禁止していたドイツ政府にたいして確固とした意志と揺るがぬ姿勢を示している。
絵の背景は婚約相手の家のまわりにあった木々である。右には牡鹿がいて左には人がいることに気づくかもしれない。
国外逃亡
公然とナチスの批判をしてしまったココシュカは逃亡に近い形でオーストリアを離れてチェコスロバキアに住居を移した。しかしチェコスロバキアに侵攻したナチスドイツはココシュカを逮捕することを明言。彼はふたたび国外逃亡しなければいけなくなり、今度はイギリスへと渡った。
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