作品概要
《嵐》は、画家のジョルジョーネによって制作された作品。制作年は1506年から1509年で、アカデミア美術館に所蔵されている。

もともとベネチアの大貿易商ガブリエル・ヴェンドラミンに依頼され描いた作品で、現在はベネツィアのアカデミア博物館に収蔵されている。度々美術史家によって描かれた場面の意味が議論されたが、明確な答えは出されていない。
描写
少なくとも1530年ごろまで右側に座っている女性はジプシーであるという解釈がなされ、イタリアではこの絵画は別名《ジプシーの女性と騎士》や《ジプシーの少女と騎士》として知られている。彼女の様子には少し違和感がある。普通ならば赤ん坊は頬の膝に抱きかかえる形になるはずだがこの絵画のかなでは母の横側に置かれている。そのため彼女の陰部は隠されていない。
反対に左側に立ち、長い棒か槍のような物を持った男性は恐らく騎士である。微笑みながら左側を見ているが女性を見ているようには見えない。美術史家は男性は騎士、羊飼い、ジプシーまたは独身貴族の一人のうちのいずれかであると見られている。ジョルジョーネはもともと男性がいる場所に裸体の女性を描いていたことがエックス線検査によって明らかになっている。右側の屋根の上には親から子への愛情を表すコウノトリらしき鳥が描かれている。
解釈
この絵画は嵐を予感させるように描かれている。色使いは控えめで緑と青が大半を占め、光も穏やかである。しかしこの風景は単なる背景ではなく初期の風景画に大きな影響を与えた。この絵画は見る者を魅了する静けさを持っている。《嵐》についての当時の文書は存在せず、今現在も確定の文書や解説書はない。「エジプトへの逃避(マタイの福音書より)」を表現しているとする者もいれば、古典神話やギリシャ神話のワンシーンと見る者もいる。
イタリアの学者サルヴァトーレ・セッティスは荒れ果てた街はエデンの園で二人はアダムとイヴ、赤ん坊は息子のカインであり、稲妻は二人をエデンから追放した神を表していると主張している。他にも道徳的な寓話をもとにしているとの主張やジョルジョーネはこの絵画に特に意味を持たせていないという主張もある。
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