作品概要
《山上の十字架(テッチェン祭壇画)》は、画家のカスパー・ダーヴィト・フリードリヒによって制作された作品。制作年は1807年から1808年で、ノイエ・マイスター絵画館に所蔵されている。

風景がメインの祭壇画
一般的にはテッチェン祭壇画と呼ばれている、フリードリヒの《山上の十字架》は、モミの木で覆われた山頂にある大きな十字架を描いている。雲で満たされた空は、赤、ピンク、紫の色調で描かれ、画面の下に向かうにつれて明るくなっている。5つの光線が、目に見えない遠くの地平線から発せられている。
成形されたキャンバスは、画家の友人である彫刻家キューンによって彫られた精巧なフレームにはめられている。このフレームには、5人の天使、星、ぶどうと蔓、麦、神の目など、キリスト教の象徴が彫られている。
風景に託した神性
フリードリヒによる最初期の作品の1つであるこの絵画は、ロマン主義的なモチーフと、彼がキャリアを通して取り上げる主題、特に風景そのものの重要な象徴主義を例示している。確かに、祭壇画には十字架が含まれているが、絵画の重点は自然の精神的な本質に置かれている。フリードリヒはこの作品について次のように書いている。
「山頂の高台には、常緑のモミの木に囲まれた十字架がある。十字架には常緑のツタが絡まっている。輝く夕日が沈み、十字架の上の救世主は日没の深紅の中で輝いている。十字架は、イエス・キリストへの信仰のように、しっかりとした岩の上に立っている。常緑のモミの木は、永遠の十字架の周囲に立っている。それは磔にされたキリストの中にある、人類の希望のようである」
これは新しいレベルの潜在的な意味を与える、風景画というジャンルの画期的な再解釈であった。それは、神の神性が最も見出されるのは自然界であるというフリードリヒの信念を反映している。
議論を呼び起こした作品
フリードリヒは深く宗教的でありながら、言葉を通して神の力を可能な限り完全に伝える絵画を描くことを目指した。だが彼のこの方法は、多くの議論を呼び起こした。
19世紀の美術評論家、ヴィルヘルム・フォン・ラムドールは、風景画は祭壇画としては機能できないと主張した。フリードリヒと彼の支持者は公的に本作を擁護した。こうした議論は、フリードリヒの評判を高めるのに役立った。
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