作品概要
《暗殺》は、画家のジェームズ・アンソールによって制作された作品。制作年は1888年から1888年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

生きるための芸術
絵としての類別されることに公然と立ち向かうようなジェームズ・アンソールの奇怪な作品。ブリュッセル王立美術アカデミーでの思うようにならない2年間を過ごした後、アンソールは故郷のオーステンドに帰り、実家である土産物屋の屋根裏にアトリエを立ち上げた。そこで彼はブリューゲルやボスといった偉大な先人から学び、レンブラントやゴヤのエッチングを写し取り、不安げな彼の家族たちの日常をスケッチすることで絵の勉強を続けた。アンソールは1883年から1893年のあいだにベルギーの前衛的芸術家の集まり「20人展」に参加していたが、仲間の芸術家たちとのいざこざや批判に悩まされる時代となった。
絵画だけではなく、アンソールは140を超える版画を制作しており、そのほとんどは19世紀も終わろうかとしている時期に集中的に活動して作られたエッチングである。死が頭から離れなくなってしまったアンソールは芸術に力を注ぐことでそれにあらがおうことを望み、エッチングにすべてを捧げるようになる。彼は「私は生きていたい。硬い銅版と修正が効かないインク、そして信頼確かな版画のことを考えている。私は表現方法としてエッチングを使う」
さまざまな画題
当時の政治情勢や文学のテーマ、キリストの人生、そしてベルギーで年に1度開かれる壮大なカーニバルの数々などがアンソール好んで取り上げたテーマだ。政治と社会の不公正に強い不安をもっていたアンソールは教会や軍隊、ブルジョアを軽蔑していた。
《キリストのブリュッセル入り》はキリストの物語に新しい要素を加えた作品で、旗や政治的なメッセージや広告を掲げる群衆を描いている。《暗殺》はエドガー・アラン・ポーのゴシック物語「ヴァルドマール氏の死の真相」(1845)をもとにした絵だ。催眠術師が死を迎えようとしている男に催眠術をかけることによって死の進行を止めようと試みる恐ろしい話である。
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