作品概要
《仮面との自画像》は、画家のジェームズ・アンソールによって制作された作品。制作年は1899年から1899年で、メナード美術館に所蔵されている。

狂気の印象派
ジェームズ・アンソールは作品に自らの芸術活動のすべてを形にしていた。昔も今も、彼に代わるような人物はどこを見ても見当たらない。それというのも、ぞっとするような作品を生み出すアンソールはジョルジュ・スーラのような印象派とは一線を画していて、光の描き方は好意的な評価を人から受けようと目指したものではなく狂気に向かったものだったからだ。
1800年代後半、医者や社会科学者たちは狂気というものは集団を困らせる病気だとしていた。下層階級の人々は理不尽で自制もできずに寛大な愛や正常になるための治療を求める貧乏人たちだと考えていたのだ。また、狂気は文字どおりすべての人に蔓延して富裕層までもが狂気にかかり、そして混沌の世の中になって炎に包まれるような世界が訪れる。すべてが終わる。そう思っていた。
仮面が表現する狂気
アンソールは”仮面”というものを言葉の意味そのままで使っていた。アンソールの家族が営んでいた店ではカーニバル用の仮面がいくつも置いてあり、彼の部屋の下ではいつも床いっぱいに仮面が並べられていた。父親や母方の祖母が短期間のうちに他界すると、アンソールはそうした仮面の多くを自身の作品に登場させるようになった。仮面を描くことによって、現実をもっと残酷で不合理なものとしてつかむことができる芸術模写として使うようになったのだ。
アンソールの《仮面との自画像》で仮面は2つの役割を果たしている。人の本当の姿を隠すことと人間の中にある一般的な性質を明らかにすることだ。そして彼は、まるで人のような仮面、仮面のような人を画面いっぱいに並べ、仮面でも人でもないような生き物に囲まれた自画像を描いたのだ。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。