作品概要
《部屋を掃く婦人》は、画家のエドゥアール・ヴュイヤールによって制作された作品。制作年は1899年から1900年で、フィリップス・コレクションに所蔵されている。

《部屋を掃く婦人》は、19世紀から20世紀のフランスの画家でナビ派のひとりにかぞえられるエドゥアール・ヴュイヤールによって1899年に制作された油彩画である。
作品の3つの要素
《部屋を掃く婦人》のモデルは、画家の母親だ。母親の身のまわりの所持品をわずかに変えて描いている。これまでも母親をモデルにした作品と同様、表情はおぼろげだ。
フランスらしい絵画伝統の真髄に属する画面すべてを豊かに彩る絵具のテクスチャーにかかわらず、本作は親密さと居心地のいい雰囲気を描き出している。主題に寄せる深い思いを筆づかいから窺うことができる。
本作は3つの要素が融合している。まず、シャルダンの作品にみられるような静かな平和な情景にみられる不滅の人間らしさ。つぎに、オランダ派の影響を受けたような画面構成にみられる幾何学的な明晰さ。そして、たんすの上に置かれた漆塗りの東洋の壺にみられる日本美術に対する異国情緒さだ。
感性の画家・ヴュイヤール
ヴュイヤールは、はっきり目にみえない喜びを物質的空間のなかに描いている。美術収集家であるダンカン・フィリップスは、ヴュイヤールの一筆一筆が画家自身を物語っているようだ、と表現している。
作品に感情をこめられるかどうかは感性にかかっている。ヴュイヤールは感性が優れているので、収集家がこぞって集めるのだ。画家の能力を崇拝し、ナビ理論から脱却して、独自のスタイルを生みだしている。〝ヴュイヤールは家や部屋に魂が宿ることを知っていたのだ〟とダンカン・フィリップスはいう。
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