作品概要
《憐み》は、画家のウィリアム・ブレイクによって制作された作品。制作年は1795?年から1795年で、テート・ギャラリーに所蔵されている。

《憐み》は1795年ごろの作品。色刷版画をベースにしていて、インクと色彩絵具で彩色で仕上げている。「大色刷版画」で知られる作品群の1つである。
『マクベス』の一節から
この時期の彼の作品は聖書やミルトン、シェイクスピアなどの影響を受けているが、本作品は『マクベス』の一説にある2つの直喩を絵にしたものである。
そして世間の同情とはまるで、
突風にまたがる生まれたままの姿の赤子のようだ。
あるいは、目には見えぬ早馬に乗る天の智天使のようだ
―マクベス(1.7.21-23)
4枚の《憐み》
その他のブレイクの版画作品と同じく、ジェッソの石膏を塗ったミルボード紙の母型紙型で刷った単刷り版画を元に最終的に手描きで仕上げている。この少し変わった手法によって、ブレイクは1つ版画から3枚の作品を残している。《憐み》の3枚はいずれも現存しているが、実は4枚目の版画が大英博物館に保存されている。これは初めに試しに作ったもので、完成作品の3枚とは異なるデザインの紙型で、サイズも小さい。
解釈
マルティン・バトリンは、この水彩版画を美術史の流れにおいて文学絵画の中でもっともすばらしい作品だと評している。シェイクスピアの詩に出てくる”憐みと風”という2つの言葉がこの絵でのモチーフになっている。女性の智天使が母親から赤ちゃんを奪い去ろうと体をかがめているのだとバトリンは解釈している。
一方ブレイクの伝記作家アレクサンダー・ギルクリストは「下で横になっているのは死を迎えてようやくゆっくり体を伸ばすことができた人で、上の女性は救いの手を差し伸べている。そんな場面を大々的に表現している」作品だとしている。
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