作品概要
《3人の女性:ピンクと灰色》は、画家のジェームズ・マクニール・ホイッスラーによって制作された作品。制作年は1868年から1878年で、テート・ギャラリーに所蔵されている。

日本美術の影響を受けた作品
ホイッスラーのパトロンであった海運王フレデリック・レイランドの自宅に飾る予定で製作された作品。「シックス・プロジェクツ」と呼ばれる、日本美術の影響を受けた6作品からなる連作のうちのひとつだった。結局この連作は完成せず、唯一完成した《白のシンフォニー:3人の少女》も後に失われた。本作品はその描き直しとして製作されたが、ホイッスラーは仕上がりに満足していなかったという。
ホイッスラーの目的は絵に物語を与えることではなく、色の調和によって雰囲気を作り出すことであった。そのため描かれている光景自体はシンプルで、3人の少女が桜の木の鉢植えを眺めている様子が描かれている。少女たちが身に着けるローブは透き通っていて、ほとんど何も着ていないようだ。中央の桜と右側の女性が持っている和傘からは日本美術の影響がはっきりとわかり、背景の灰色の仕切りも東洋の屏風を意識していると思われる。
理想の色彩を求めて
繊細な色使いはホイッスラーが最もこだわった部分である。タイトル通りピンクと灰色を中心としたパステルカラーに、鉢と少女のバンダナの明るい赤色と背後の壁の水色がアクセントとなっている。細部の描写をあえて省き、色彩のハーモニーを追求するという姿勢は彼と同時代の印象派、さらにはもっと後の20世紀の抽象画も思わせる。
ホイッスラーは自らの理想とする色彩を完璧に表現するため、時にはモデルに着せる衣装や床のカーペットまで自らデザインし、それをキャンバスに再現するためにかなりの時間をかけて作品を製作した。長時間ポーズを取らされたモデルたちの多くは疲労困憊してしまったと言われている。
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