作品概要
《肌色と緑色の黄昏:バルパライソ》は、画家のジェームズ・マクニール・ホイッスラーによって制作された作品。制作年は1866年から1866年で、テート・ギャラリーに所蔵されている。

チリの港に集う艦隊
タイトルからもわかる通り、黄昏時の色のハーモニーを描くことが主題となっている。バルパライソはチリ中部の都市で、1866年3月にスペインが行ったバルパライソ爆撃を題材に描かれた作品である。
1864年にスペインとその旧植民地であるペルーとチリの間でチンチャ諸島戦争が勃発したことを受けて、ホイッスラーは1866年に南米諸国を支援するためにチリに向かったとされる。だが、具体的な政治行動を起こした記録はなく、何のためにバルパライソに行ったのかははっきりしない。
彼がチリに到着したとき、6隻のスペイン軍の船がチリの主要港であるバルパライソを塞いでいた。チリに滞在する自国民を守り事態を収束させるため、イギリス、フランス、アメリカが中立的な立場で艦隊を派遣するも、スペインが爆撃予告を出したため撤退を余儀なくされた。翌日、スペインはバルパライソに爆撃を開始した。
正確性より色彩を重視
ホイッスラーはこの作品で、英仏米の艦隊が撤退する時の様子を描いている。歴史的記録から、英仏米軍が派遣したのは蒸気船やフリゲート艦、小型砲艦などであることがわかっているが、ここに描かれている船はみな帆船である。どの国の船かもはっきりせず、唯一中央の船にフランスの三色旗が掲げられているのがうっすらと見えるのみである。ここからわかるのは、ホイッスラーは自らの記憶を頼りにこの絵を製作し、場面の現実的な正確さよりも全体的な色彩の効果を重要視しているということだ。
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