作品概要
《ピンクとグレーのハーモニー(レディ・ミューズの肖像)》は、画家のジェームズ・マクニール・ホイッスラーによって制作された作品。制作年は1881年から1881年で、フリック・コレクションに所蔵されている。

社交界で活躍した女性
ロンドンでブルワリーを営んでいたサー・ヘンリー・ミューズの妻、レディ・ミューズを描いた肖像画で、ホイッスラーが彼女を描いた作品としては2作目となる。ホイッスラーはレディ・ミューズの肖像画を3点製作しているが、3作目はミューズとの間に諍いが起こったため、完成前に自ら破棄してしまったという。
レディ・ミューズは、ロンドンのカジノでバーテンダーや売春婦をしながら女優を目指していたようだが、実業家のヘンリー・ミューズと出会い結婚。社交界で活躍し、狩りの時に象に乗って現れるなど話題となる人物だった。彼女は、美術評論家ジョン・ラスキンとの裁判で経済的に困窮していたホイッスラーに高額の報酬で肖像画の製作を持ちかけた。
色の調和を重視
この肖像画では、レディ・ミューズはピンクがかったグレーのカーテンを背景に、ステージの上に立っているように描かれている。これは、彼女が舞台女優を自称していた(1シーズンのみ舞台に立ったことがあるらしい)ことによる演出であろう。服装も、背景と色調を合わせて、ピンクのサテン地で縁取られたライトグレーのドレスである。ホイッスラーは絵画において色の調和を重んじており、タイトルからもそれがわかる。また、絵画と音楽に類似性を見出した彼は、「ハーモニー」「ノクターン」などの音楽用語を好んでタイトルに用いた。
右側の中央よりやや下に、ホイッスラーがサインとして用いた蝶のマークが描かれている。これは日本美術を愛好した彼が、日本の落款や家紋を参考に考案したものだという。
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