作品概要
《黒のアレンジメントNo.5(レディ・ミューズの肖像)》は、画家のジェームズ・マクニール・ホイッスラーによって制作された作品。制作年は1881年から1881年で、ホノルル美術館に所蔵されている。

社交界の華
ジェームズ・マクニール・ホイッスラーは、19世紀後半に肖像画家、風景画家として活動した。アメリカ出身だが、画家になるためヨーロッパに渡り、主にロンドンで生活していた。油絵の他にエッチングも多数製作している。
描かれているレディ・ミューズは、ビクトリア時代の社交界で活躍した女性であり、ロンドンでブルワリーを営むサー・ヘンリー・ミューズの妻だった人物。女優と自称していたが、舞台に上がったことはほとんどなかったようだ。ロンドンのカジノのバーで働いていた時にヘンリーと出会ったとされる。
皇太子夫妻が称賛
1879年に、彼の絵を批判した美術評論家ジョン・ラスキンとの裁判費用を支払えず、破産に追い込まれたホイッスラー。彼の破産後、最初に多額の報酬で肖像画の依頼をしたのはレディー・ミューズだった。ここでは黒いドレスに長い白のファーコートを羽織り、ダイアモンドのティアラ、ネックレス、ブレスレットをつけてポーズをとっている。当時皇太子だったエドワード7世とアレクサンドラ皇太子妃がホイッスラーのアトリエでこの絵を見て称賛したという。1882年のパリのサロンでも展示され、好評を博した。
ホイッスラーは、絵画のタイトルの多くに「アレンジメント」や「ハーモニー」などの音楽用語を用いた。これは、彼が絵画と音楽に共通点を見出したことによるものであり、また抽象的なタイトルにすることで、絵画を鑑賞する上で彼が不要と考えた、描かれた対象についての情報を取り去る意図があった。
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