作品概要
《アトリエの画家》は、画家のジェームズ・マクニール・ホイッスラーによって制作された作品。制作年は1865年から1866年で、ダブリン市立美術館に所蔵されている。

画家の制作風景
ホイッスラーが自らのアトリエで絵画を製作している様子を描いた自画像である。アトリエには彼が愛好した東洋美術の品々が飾られている。壁には掛け軸のようなものが3つかけられており、画面左側の棚には青と白の陶磁器が並んでいる。さらに、真ん中に立っているモデルは、着物を着てうちわを持っているのがわかる。ホイッスラー本人はモデルたちに背を向けてパレットと絵筆を持ち、こちらを見つめている。アトリエでの絵画の制作風景が、彼に特徴的な落ち着いた色調の絵具を薄く重ね塗りする技法で表現されている。
日本美術の影響
ジェームズ・マクニール・ホイッスラーは19世紀後半に活躍した画家。アメリカ出身だが画家人生の大半をロンドンで過ごした。連作《ノクターン》など、音楽用語をタイトルに用い、色彩のハーモニーを追求した風景画で知られている。浮世絵がヨーロッパに輸入された最初期からの日本美術の愛好者でもあり、着物を着た西洋の女性を描いた作品があるほか、構図などが浮世絵の影響を受けていると言われる。
肖像画としては、恋人を描いた《白のシンフォニーNo.1》や、母親を描いた《灰色と黒のアレンジメントNo.1》が有名だが、同時期の他の画家と比べると、肖像画家としてはさほど成功してはいなかった。ホイッスラーは作品を完成させるのにかなり時間をかけており、モデルも長時間かつ数十回にも上るポージングを強いられていた。1890年代に彼の作品が広く知られるようになる頃には、彼の肖像画家としての肩書はもはや過去のものとなっていた。
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