作品概要
《灰色と黒のアレンジメントNo.1-母の肖像》は、画家のジェームズ・マクニール・ホイッスラーによって制作された作品。制作年は1871年から1871年で、オルセー美術館に所蔵されている。

母親の肖像
作者ホイッスラーの母親、アンナ・マクニール・ホイッスラーの肖像画である。絵画を納めるフレームもホイッスラー自らデザインしている。ホイッスラーの祖国アメリカでは母親像の象徴として扱われ、ビクトリア時代のモナ・リザなどとも呼ばれている。
この作品は1872年にロンドンのロイヤル・アカデミー(王立芸術院)の展覧会で発表された。《アレンジメント》という抽象的なタイトルが鑑賞者に理解されなかったため、途中からタイトルに《母の肖像》と追記され、後には単に《ホイッスラーの母》と呼ばれるようになった。この絵は彼がアカデミーに出品した最後の作品となった。
歴史家・批評家のトマス・カーライルはこの絵を気に入り、同様の構図で肖像画のモデルを務めた。その作品が《灰色と黒のアレンジメントNo.2》となったため、本作品が《灰色と黒のアレンジメントNo.1》と呼ばれるようになった。
母親との同居生活
作品が製作された当時、ホイッスラーの母親はロンドンのチェルシーで彼と同居していた。真偽は定かではないものの、他のモデルが来られなくなったため代わりに母親がモデルになった、元々は立ち姿を描くつもりが、母親が長時間立っていらず座った姿になった、といった話が伝わっている。
祖国アメリカを離れ自由な暮らしを謳歌していたホイッスラーと、信心深く真面目な母親は、ロンドンで同居を始めた当初こそ対立したものの、最終的にはホイッスラーは様々な面で母親に支えられることとなった。ホイッスラーの母親は彼の日常生活の世話をしたほか、彼女の存在がホイッスラーの生活態度を多少改めさせることにもなり、パトロンに良い印象を与えたという。
この肖像画は母性や家族愛を象徴するものとして、アメリカで切手や彫刻の題材となったほか、さらにはポップカルチャーでパロディーの対象にもなっている。
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