詩人に霊感を与えるミューズ

《詩人に霊感を与えるミューズ》は、フランスの画家アンリ・ルソーによって1909年に制作された油彩画である。バーゼル美術館に所蔵されている。

遅咲きの「日曜画家」

アンリ・ルソーは、遅咲きの労働者階級であるという美術史上の不幸に耐えた画家である。彼は40代に真剣に絵を描き始めた「日曜画家」であり、その独学による作品たちは批評家たちの嘲笑の的であった。「ナイーブ」や「シンプル」といった嘲りの形容詞を浴びてしまうスタイルを持っていたルソーは、芸術史の外に追いやられてしまった。

それにもかかわらず、彼の一度見たら忘れることのできない作品は、文学者や芸術家のグループの注目を集めた。彼の驚くべき作品は詩人ギヨーム・アポリネール、小説家アルフレッド・ジャリ、画家パブロ・ピカソによって賞賛され、マックス・ベックマン、ワシリー・カンディンスキー、フェルナン・レジェなどの画家に大きな影響を与えた。

図像解説

この作品で、ルソーは20世紀の著名な詩人ギヨーム・アポリネールと、その恋人である画家マリー・ローランサンを描いている。ルソーは、彼が考案したジャンルである「風景肖像画」に沿って二人を描いている。

前景の花は、詩人の不滅の魂を象徴することを意図している。マリー・ローランサンは、ミューズとしての特別な役割を与えられている。彼女は古代ギリシャのペプロスを着た姿で描かれている。アポリネールは、彼の職業の象徴である羽ペンを持っている。また、この作品の画題は、画家自身がつけたものである。