作品概要
《サン・マルタン運河の眺め》は、画家のアルフレッド・シスレーによって制作された作品。制作年は1870年から1870年で、オルセー美術館に所蔵されている。

アルフレッド・シスレーは他の印象派の画家に比べ、あまり都市の景色は描いていない。シスレーは田舎を作品の題材として好み、また、田舎そのものを最も好んだ。
本作品はそんなシスレーが都会であるパリのサン・マルタン運河を描いている。しかし、サン・マルタン運河の静かなさざ波と穏やかな明るい空はシスレーの好む田舎風な変化をもたらしており、本作品の大事な要素となっている。
早春のサン・マルタン運河
この風景画に描かれいてるのは、パリのサン・マルタン運河を広い範囲で描いている。家々や倉庫が両側から運河を見渡しており、遠方には、水門を越え都市の中心部に向かっていくつもの建物がぼんやりとした靄の中に建っているのが見える。
運河は、影の状態から見て、最も高く上がった太陽の中で日光浴をしているかのようだ。しかし、スッと吹く風が水をかき回して気温を下げ、頭上では雲が青い空をスーッと流れている。木の葉や地面の草が比較的少ないことから、恐らく早春の風景であろう。
実物のように見せるハイライト
シスレーは、ブルーやグレーの絵の具の載った銀色のパレットを使って、水面のハイライトを描くために絵の具を厚く塗り、その一瞬をとらえている。彼は作品の構図のアウトラインだけをあらかじめ描いておき、アトリエに戻って影になっている建物を描いたことはほぼ確実である。しかし、光の鮮明さやその反射から、作品の残りの部分は無意識のうちに屋外で完成させたことを示している。
シスレーは、水や空などの流れを感じるものと橋や建物などの固定されたものを対比させることで、コントラストが得られることをよく知っていた。本作品では、彼は水の大きな広がりと運河の両側に連なる建物および後方にある水門を対比させている。運河の水面にハイライトを当てている太陽は本物のようで、作品を見る者は目を細めてしまうだろう。
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