作品概要
《アムールとプシュケー、子供たち》は、画家のウィリアム・アドルフ・ブグローによって制作された作品。制作年は1890年から1890年で、個人に所蔵されている。

《アムールとプシュケー、子供たち》はブグローの作品の中でも特に有名な画だ。1890年のサロン・ド・パリで展示され、羽を持った幼児の姿でキューピッドとプシュケーを描いている。
テーマと表現
天使の羽を持ったキューピッドと、蝶の羽を持ったプシュケーが雲の上で抱擁し、愛と純真さの理想を描いている。柔らかい背景の上に二人の姿が繊細に乗せられ、この画の大きな特徴となっている。ブグローの明るい色調の色使い、軽く調節された筆使いの技術が滑らかに組み合わさり、純粋な雰囲気と子供の純真さが表現されている。
愛をテーマとする絵画としては珍しく、全体的に青色で寒色系の構成となっている。ピンクや赤を使わないことで、「禁じられた愛」というテーマを遠ざけ、若い純粋な愛を引き立たせる意図があった。
題材の背景
前述のように、プシュケーとキューピッドをテーマに、純真さ、ロマンチックな愛、神聖な結婚を描いた画をブグローは何枚か描いており、《アムールとプシュケー、子供たち》はその一つだ。アプレイウスが書いた「変身物語」の中でもブグローは特にキューピッドとプシュケーの試練と救済のテーマに刺激された。
当時タブーとされていた性と官能を題材に描きながら、明らかに性的に見えないように構成していた。キューピッドとプシュケーの愛は多くの障害を乗り越え、神々の助けを経て最後には成就する物語となっている。本作は禁じられた二人の愛が始まったところが描かれている。
人物の姿かたち
キューピッドとプシュケーが赤ちゃんに近い幼児の姿で描かれているのは、ローマ神話でのエロスに当たるクピドがよく、弓矢を持ち、羽が生えた、可愛らしくいたずら好きな赤ちゃんとして描かれるからだ。
一方、ギリシャ神話のエロスは若い男性として描かれ、プシュケーと恋する関係として登場する。実際のプシュケーは美術史の中でも一般的には若い女性として描かれているが、本作では赤ちゃんの姿のキューピッドに合わせられている。
そして、プシュケーには天使の羽ではなく蝶の羽がついている。アリストテレスが蝶に対してつけた単語がプシュケーだったからだ。プシュケーは人間から不死の存在へと変わっていったため、人間の魂の変容を象徴する。
広まってしまった誤題
本作は英語名で《The First Kiss》となっていることがあるが、実際は間違いである。インターネット上のバーチャルギャラリーとして初期に登場したウェブミュージアムにて、1873年作の《The First Kiss》のところに誤って《アムールとプシュケー、子供たち》の画像が載ってしまったことが発端だった。絵の右下をよく見ると、1890年と作者の名前が書いてあるため、誤りであったことが発覚した。
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