作品概要
《ナルシスの変貌》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1937年から1937年で、テート・モダンに所蔵されている。

ダリが偏執狂的批判的な手法を用いていた時期の絵画であり、精神分析と深い関係を持つ作品。
ギリシャ神話をモチーフ
ギリシャ神話によるとナルキッソスは、水たまりに映る自身の姿に恋をしたとされている。水面に映る像を掴むことができず、ナルキッソスは瘦せ衰え、神は彼を不死の花にした。
《ナルシスの変貌》はナルキッソスが水たまりに座りこみ、見下ろしている姿を描いている。ナルキッソスから程遠くないところには腐食した石があり、この石はナルキッソスに相当するが、スイセンの咲く電球か卵を手にしていると、本来とは非常に異なる解釈されている。
描かれた卵は、ダリの他作品において、性のシンボルとして使用されている。背景には裸の姿がいくつも見られ、一方で地平線には3つ目のナルキッソスのような姿が描かれている。
絵画と詩
ダリは当初絵画とともに展示されていた以下の詩を詠んだ。
後退する暗雲の中の裂け目の下で
4月の爽やかな空に
目には見えない春が揺らめく
最標高の山の上で
雪の神の光り輝く空間へ傾けられたまばゆい頭が
垂直な雪解けの大滝の中で
望みとともに溶け始める鉱物の涙の中大きな音を立て消滅する
あるいは冬のベールの取り払われた苔の静寂の中で
遠くの湖の鏡に向かって神は新たに発見した
彼の忠実なイメージである稲妻のきらめきを…
来歴
ダリはアメリカで大成功を遂げた後、1937年に長い間待ち望んでいたパリへの帰還中にこの作品を完成させた。
フロイトからの賞賛
精神分析学の祖は、シュールレアリスト愛好家ではなく、シュールレアリストたちが創る作品はあまりに精神分析を意識しすぎているが、彼の理論を理解していないと感じていた。しかし、フロイトにとってダリは例外だった。
両者が1938年に会った時、ダリは素っ気なく82歳のカリスマの肖像画をスケッチした。
その際、フロイトは「こいつは気違いだな」と囁いた。この発言がダリを鼓舞し、フロイト自身が行った提案による《ナルシスの変貌》は精神分析の研究において重要な意味を持つ。
フロイトは後に、「私はシュールレアリストたちを100%愚か者だという目でいつも見ていたが、天才の狂気の目を持つこのスペインの若造にそんな持論を考え直させられた。」と語った。
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