作品概要
《賭博偏執狂》は、画家のテオドール・ジェリコーによって制作された作品。制作年は1822年から1822年で、ルーヴル美術館に所蔵されている。

ジェリコーと精神病
ロマン主義の先駆者と言われるテオドール・ジェリコーは、1819年に今では自身の代表作となった《メデューズ号の筏》を発表したが、当時は批判を浴びたこともあり、ジェリコーはうつ病を患ってしまった。
また、彼の祖父と叔父の一人も精神病疾患で亡くなったため、もともと精神病疾患には興味を持っており、精神状態が人間の表情に及ぼす影響、特に狂気にとりつかれた人間や死の瞬間に対面した時の表情を描くことに熱心であった。
ジェリコーはサルペトリエール病院に通院し、友人でもあるジョルジェ医師に勧められ、≪サルペトリエールの精神疾患者たち≫という10連作の精神病疾患者の肖像画を描いたが、現在ではそのうち5作のみしか発見されていない。
ジョルジュ医師がジェリコーにこれらの連作を描くよう勧めたのは、精神科医にとって精神病のサインを発見することの重要性を世間に示すためと、ジェリコー自身の治療になると考えたからだとも言われている。5作品のカンヴァスの大きさは多少異なっているが、いずれも等身大であるという点では共通している。
本作品について
今となっては確かめることはできないが、この老女の記憶を失ったようなうつろな目と落ちた肩等から、ジェリコーはこの老女がパーキンソン病であると推測していた、という説があり、その点から医学界からも注目を得ている作品である。
彼はこれらの連作を書き上げて間もなく32歳という若さで結核により死去している。
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