作品概要
《ヴェルサイユ宮殿の礼拝堂》は、画家のエドゥアール・ヴュイヤールによって制作された作品。制作年は1917年から1929年で、オルセー美術館に所蔵されている。

《ヴェルサイユ宮殿の礼拝堂》は、19世紀から20世紀のフランスの画家であり、ナビ派のひとりにかぞえられるエドゥアール・ヴュイヤール(1868-1940)によって1892年に制作されたテンペラ画である。
フランスの国民感情を表現
本作は、家族をモデルに身の回りのありふれたものに囲まれたプライベートな室内空間を繰り返し描いているヴュイヤールの作品のなかで、公共の場を描いた珍しい1枚といえる。
この静謐な雰囲気がうかがえる本作は、矛盾することに、第一次世界大戦が引き金となって制作された。世の中が混迷するなか、ヴェルサイユ宮殿の古典様式の装飾に画家は深く関心を抱いた。これによりヴュイヤールはフランスを襲う災難をきりぬけ、フランス人としての感性を作品中にこめる方法を見出したのだ。また1871年ヴェルサイユ宮殿の鏡の間で、ドイツ帝国の摂成立が宣言されたことへの強い憤りの国民感情を表現する手段にもなった。
きっかけは演奏会
本作のテーマは、1917年6月に参加したある演奏会がきっかけになった。その演奏会では、ラランドとラモーの曲が披露された。このときの演奏と建築が共鳴しあっているような感覚を覚え、そのハーモニーを絶賛したかった。そして、その場限りにすることなく、座席から建築や彫刻をスケッチしていった。
青いガウンを着た輝くばかりの金髪の若い娘は、モーブグレイの色調の全体を明るくしている。右端のスカイブルーの制服を着た子供は、世界の混乱から救われたこの美しい瞬間に支払われる責任を思い起こさせるものとして描かれている。後ろ姿の女性の存在があって、本作は完成の域に達しているといえる。
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