作品概要
《波》は、画家のウィリアム・アドルフ・ブグローによって制作された作品。制作年は1896年から1896年で、個人に所蔵されている。

本作品の制作を始めた頃、ブグローはすでに有名人となっており、パリだけでなく国際的な規模で美術界に名を馳せ、典型的なフランスのサロン画家として評価されていた。
要素の少ない印象的な構成
《波》は1896年のサロン用に描かれ、古典的ヌード画における昔ながらの構成に忠実な絵画だ。昼と夜をテーマに戯れを表現した《ヴィーナスの凱旋》、その後にさらに典型的な《ヴィーナスの誕生》と好評を博した絵画に続き、ブグローはより印象的なコンセプトの演出を芸術界に提示した。
題材に関しては伝統に忠実だが、水浴びするヌード女性を描いた他の作品に対しても、より鮮明な写実主義の印象を与えた。プット、ニンフ、海の神たちに囲まれてまっすぐ立つヌード姿から移行し、物語の基礎となる要素だけに構成を絞り込むことで、このジャンルに非常に強い存在感を提示した。
モデル
オディール・シャルパンティエという女性がこの作品のモデルとされており、《黙想》《幻想》《愛の秘密》と同年に制作された他の3作品のポーズもとっている。しかし、頭部はまた別のモデルを雇っていたようで、エスキースの裏面に記されていたメモからミス・ガブリエルと言われている。
さらに1906年、長く続く「この作品のモデルは誰か」論争にとある評論家は、マルト=カミーユ・ドヴァリエールという、作者の想像力を掻き立てた3人目のモデルがいた、と付け加えた。
緻密な描写
細部に至るまでブグローは作品に正確さを求め、モデルたちの足首や手を何時間にもわたりスケッチをしていた。人物と同じくらい背景の描写にもこだわる、非常に優れた図案と色彩感覚の持ち主だ。水しぶきや荒れた波から出る泡、濡れた砂に映る身体の描写など、《波》ではその細部へのこだわりがはっきりと認識できる。
肌の質感や筋肉に至るまで非常に緻密で、モデルの年齢もわかりそうなほどだ。遠近感にも写実主義が表れており、前面のお尻と太ももはカメラレンズを通じて見ているかのように拡大されている。
さらに、当時ブグローが描いていた人物たちのほとんどが優しい目線を向けているのに対し、《波》の女性の目線は真っ直ぐで強い。荒れた海を背景にキャンバスに描かれたヌード女性は、見る人々に驚きを与えている。
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