作品概要
《悪夢》は、画家のオノレ・ドーミエによって制作された作品。制作年は1832年から1832年で、メトロポリタン美術館に所蔵されている。

《悪夢》は、諷刺版画家であり油彩画家でもあるオノレ・ドーミエ(1808-1879)によって1832年に制作された油彩画である。
梨の王
当時、ドーミエは国王ルイ=フィリップを洋梨になぞらえて諷刺画を制作していた。国王と洋梨に例えるアイデアは、諷刺新聞『カリカチュール』の創設者シャルル・フィリポンだったが、ドーミエの諷刺画によって、このモチーフを認知させ、世に広まっている。国王を諷刺画に描いたかどで、1832年には、フィリポンもドーミエも6か月の禁固刑に処されている。
画面中央の壁には、七月革命で新しい国王の横に立つラファイエットの姿がかけられている。その下のソファーで眠るラファイエットは、夢のなかでも洋梨姿の国王に迫られている。それに足をふんばり、抵抗を試みている姿が見てとれる。
モデルとなった人物
モデルとなった人物は、フランスの侯爵、軍人、政治家でもある。ラファイエットである。ラファイエットはフランス革命とアメリカ独立革命における立役者で「両大陸の英雄」と讃えられている。彼はフランス革命の時、国民軍司令官となった経歴をもつ。七月革命でも国民軍の指揮をとったが、ルイ=フィリップが籠絡させて、王政を樹立した。だが、ラファイエットはルイ=フィリップに手を貸したことを後悔した。共和派への裏切りではないかと思い悩み、国民軍地司令官の役を辞任している。本作では、梨が彼の身体に文字通り重くのしかかっているさまを表している。
また、ソファーでまどろむラファイエットの胸の上に、洋梨が乗っている構図は、ドイツ系スイス人の画家アンリ・フュースリーが描いた同タイトルの作品を明らかに参照していると考えられる。
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