作品概要
《エプソムの競馬》は、画家のテオドール・ジェリコーによって制作された作品。制作年は1821年から1821年で、ルーヴル美術館に所蔵されている。

馬とジェリコー
ロマン主義の先駆者と言われるテオドール・ジェリコーは生涯馬に魅せられた画家である。馬の荒っぽい性質は彼の激しい気性を写し出しているかのようである。彼は1791年に裕福な家に生まれ、幼少期から馬に親しみ、1808年に馬と近代軍事の画家として有名だったカルル・ヴェルネに弟子入りしたが、2年後に「私の1頭の馬は彼の6頭をむさぼり食っただろう」と師を超えたことをほのめかして辞めている。
作品の成り立ち
今では代表作となった《メデューズ号の筏》だが、当時は非難を浴びたためジェリコーはひどく傷つき、イギリスに逃げ場を求めた。そこで彼はイギリスの風景画家たちと知り合いになり、イギリス絵画の主題である「競馬シーン」に夢中になった。暗い雲が地平線に迫ってくる構図はイギリスを代表する風景画家・ジョン・コンスタブルの影響を多く受けている。
ジェリコーが官展に出展したのは《突撃する近衛猟騎兵士官》、《戦場から去る負傷した胸甲騎兵士官》、《メデューズ号の筏》の3回だけだが、そのうち2つは一人の兵士と一頭の馬という構図である。それらと比べると馬の雰囲気が大きく異なっており、彼にとって馬はもはやルーベンスや古代様式のようなマッチョな強さを象徴するものではないことがわかる。
本作品後のジェリコー
生涯馬が好きだったジェリコーにとって皮肉なことだが、1823年の落馬事故により持病の脊椎結核が悪化し、翌年に32歳という若さで死去している。
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