作品概要
《テラスの婦人》は、画家のポール・シニャックによって制作された作品。制作年は1898年から1898年で、アイルランド国立美術館に所蔵されている。

《テラスの婦人》は、フランスの新印象主義の最も重要な画家のひとりであるポール・シニャック(1863-1935)によって1898年に制作された油彩画である。
下絵を繰り返し描くシニャック
シニャックは、サントロペに構えたアトリエで本作を制作した。1880年代初頭から新印象主義の手法に果敢に取り組んでいた。首尾一貫して、本番に取りかかる前に、多くの下絵を手がけた。下絵のなかには、色をつけるものもあった。《テラスの婦人》でも、シニャックは何枚も下絵を繰り返し描いた。
本作のなかで、シニャックは光と色彩の効果を併用した構図にすることに拘りを見せている。「テラス、手すり、植栽、壁や海などに青・緑・紫などの後退色を配置し、最前面にある奥行きのないデッキから遠い山脈へと鑑賞者の視線を誘っている」とアイルランド美術館の担当者は延べている。画面の女性のモデルは、シニャックの妻、バーサである。婦人は横にのびるテラスと対照的となるように垂直に立っている。それを踏まえたように、塔や木々も垂直に描かれている。フランスのリヴィエラの美しい日没の風景を巧みに表現した一枚だ。
本作に触発された画家
初期作品と比較すると、新印象主義のスタイルを色濃く反映しているが、まだ細部に慎重に筆を入れた跡、抑え気味の色調であるものの、自由に表現している。このようなシニャックの作品に触発されて、友人であり画家のアンリ・マティスが1904年に制作した《豪奢、静寂、逸楽》はフォービズムの出発点となる作品だ。筆触分割を用いた手法はシニャックの作品に類似している。
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