作品概要
《ブノワの聖母》は、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された作品。制作年は1475年から1479年で、エルミタージュ美術館に所蔵されている。

1475年から1478年にかけて描かれたレオナルド・ダ・ヴィンチの初期の名作。「聖母子と花」、またの名を「ブノワの聖母」とするこの絵画は、レオナルド・ダ・ヴィンチが1478年10月に制作、聖母をテーマとした2つの絵画のうちの1つであると言われている。
ちなみにもう1つは「カーネーションを持つ聖母」であり、こちらはミュンヘンのギャラリーにて展示されている。
ブノアの聖母はレオナルドが師匠であるヴェロッキオから独立して初の作品であると言われており、練習用のスケッチが大英博物館にて二点収蔵されている。スケッチと実際の作品からは、レオナルドが目線の描き方に趣向を凝らしたことが見て取れるだろう。
当時の絵画の傾向としては、人間の目線がどこを向いているかを誇示することが重要な要素であった。この絵画の中の子供は母親の手を自分の目線の中心に持っていく様子と思われる。
聖母マリアが赤子であるキリストを膝の上で優しくあやす様子を柔らかい色使いで描写している。背景は漆黒で塗られており、白い肌の聖母とキリストの姿が対比され見るものに強い印象を与える。
この作品は名門貴族クラーキンが当初所有でしていが、フランスの画家レオンブロアの手に渡った後、ロシア皇帝ニコライ2世のものとなった。ブノワの聖女と言われているのはその経緯からである。
この作品はダヴィンチが独自に開発したスフマートといわれる技術が使われている。これは色をぼかして塗っている方法で自然に近いグラデーションを表現できる。
また、背景右の窓部分は白で塗りつぶされているが、これが未完成なのかダヴィンチが故意に塗りつぶしたのは未だ真相はわからないままである。
なお、この作品については長年、贋作ではないかとの疑いがあったが近年において大英博物館からダヴィンチの手によるこの絵の素描が発見されたことから真作であると認められた。
背景の窓部分は空白であるが、ダヴィンチの同時期の作品”リッタの聖母”では背景の窓に青空が描かれていることから青空を描こうとしていたのではないかという説もある。
現在はロシアのエルミタージュ美術館にて所蔵されている。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。