作品概要
《井戸端の女たち(井戸端のプロヴァンス嬢)》は、画家のポール・シニャックによって制作された作品。制作年は1892年から1892年で、オルセー美術館に所蔵されている。

《井戸端の女たち(井戸端のプロヴァンス嬢)》は、フランスの新印象派主義の画家ポール・シニャック(1863-1935)により1892年に制作された油彩画である。本作に対して、ポスト印象派の画家であるポール・ゴーギャンは「《井戸端の女たち》は紙吹雪で作っているようだ!」と侮辱的ともとれる発言を残している。
テーマの転向
1891年、シニャックの絵画に多大なる影響を及ぼしたジョルジュ・スーラが夭折すると、シニャックは新印象派の先駆者として自らの制作に熱心に打ちこんだ。それでも友人の早すぎる死にショックを受けていた彼は、友人のすすめもあり、1892年に、パリを離れた。ブルターニュのフィニステールから出帆し、ミディ運河とマルセイユを航行し、南岸部にある小さな漁村サン=トロペに辿りついた。以降、1931年まで1年の半年をサン=トロペで過ごすようになる。
シニャックの絵画のテーマはがらりと様変わりした。それまではパリの労働者に焦点を当てていたが、明るい村の様子や海岸の全景を描くようになった。1892年夏のあいだ、サン=トロペの漁港を小型の絵画を制作した。その後は、より大きな作品を手がけるようになる。
スーラへのオマージュ
《井戸端の女たち》の初期の習作は、ふたりの女性が一緒に井戸から水をくみ上げる場面だった。シニャックは、ふたりの婦人の特徴を描きわけた。明るい色使い、精緻な色模様は理想郷を思わせる。青の輪郭線と装飾的に描かれた影はスーラの《サーカス》の手法の模倣と考えられる。
背景はサントロペの実在する風景を採用した。頂上に要塞のある丘、海、防波堤のある港、モール山地、エストレルの丘陵地帯など、それらの景色をスケッチや入念な準備のあと、1枚のカンバスのなかに集約した。
本作は1893年のアンデパンダン展では《井戸端のプロヴィンス嬢》と題して出品された。
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