作品概要

ユピテルとセメレ》は、画家のギュスターヴ・モローによって制作された作品。制作年は1889年から1895年で、ギュスターヴ・モロー美術館に所蔵されている。

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主題

本作は、ローマ神話の神ディオニュソスの母であり、主神ユピテルの愛人であった女性セメレの死を描いたものである。彼女は、ユピテルの妻である女神ユノにそそのかされ、ユピテルに自らの元に神としての正装で現れることを求めた。彼はその求めに応じたが、そうしたことによって、雷神である彼が帯びていた雷鳴と稲妻にセメレは打たれて死んでしまった。

本作は、神格化された肉体的愛情という概念を表現していると同時に、最正装を纏ってユピテルが現れたことが、セメレにとって焼き尽くされるような圧倒的な経験であったことを象徴している。

この作品について、モローは自身は「神聖なる雷霆によって貫かれ、神に身を捧げることによって生まれ変わり浄化されたセメレは稲妻に打たれて死ぬが、山羊の蹄を持った地上の愛の天才を産む」と記した。

描写

本作は、忘れがたく象徴的なモチーフを満載し、複雑で激しい驚くべき神秘的な世界を描いている。その図像は、古代の伝説や象徴主義文学、彼自身の個人的解釈をもとに描かれており、モチーフは意図的に神秘的かつ多義的になるように配されている。

ユピテルは慣例通りに描かれ、不幸な血まみれのセメレを己の右ひざに横たえながら、玉座に腰掛けている。彼の眼光は厳めしく、目を大きく見開きひたすら一心にまっすぐ正面を向いている。しかしながら彼の玉座と廷臣たちは、前例がないほど非常に豊かに建築や植物の要素を表しており、それらの要素は優雅で写実的かつ宝石のように緻密に描かれていると同時に、全体に夢のような幻想的世界の印象を与えている。

いたるところに配された豊かな生気あふれる色が、暗い影とコントラストをなし、それを際立たせている。数え切れないほどの神々や女神たち、寓意的象徴が異なった大きさで独立して、互いを意識していない状態で存在しているようである。キャンバス全体に広がるにつれて、鑑賞者の視線は奇妙な変化に慣れるに違いない。

多くの象徴の中でも、三体がユピテルのすぐ足元にいる。これらは、血まみれの剣を抱いた「悲しみ」の象徴と牧神パン、白百合を高く掲げる女性の姿をした「死」の象徴である。モロー曰わく「玉座の足元には、死と悲しみが人生の悲劇的基盤を形作っており、そこから遠くない所では、大地の象徴である牧神パンがユピテルの庇護のもと、悲しみでうなだれている。同時にその足元には、暗黒界と闇の怪物達のぼんやりとした群が折り重なっている」

受容の様子と解釈

フランスの作家で画家のマルコム・ド・シャザールは本作の中心的イメージを「生死の一体化」と呼んだ。スウェーデンのシュールレアリストであるラグナル・フォン・ホルテンは本作を「死による復活の寓意」と表現した。

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基本情報・編集情報

  • 画家ギュスターヴ・モロー
  • 作品名ユピテルとセメレ
  • 英語名未記載
  • 分類絵画
  • 制作年1889年 - 1895年
  • 製作国フランス
  • 所蔵ギュスターヴ・モロー美術館 (フランス)
  • 種類油彩
  • 高さ212cm
  • 横幅118cm
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