作品概要
《カンテラ職人の求婚》は、画家のウィリアム・ホルマン・ハントによって制作された作品。制作年は1854年から1860年で、マンチェスター市立美術館に所蔵されている。

《カンテラ職人の求婚》は、イギリス人の画家であり、ラファエル前派を1848年に創始した美術家の一人である、ウィリアム・ホルマン・ハントによる絵画である。
本作で描かれているのは、エキゾチックなオリエンタリスト(東洋学)のスタイルで描かれた、道端の風景である。
作品の特徴
左には若いカンテラ職人が赤いコートと緑のターバンを着て、工房の外にあるベンチに座っている。彼の隣には、若い女性が長く青いガウンと金色のトルコ風の靴を履いて立っている。彼女の顔の下半分は、黒いベールにより隠されている。
背景には、青いジャケットとシルクハットを着用した男が、ロバに乗って遠くの方へ向かっているのが見られる。その横には、遣いの者がロバに乗った男を追っている。
エキゾチックな場面から覗く皮肉
ハントが本作を描き始めたのは、エジプトのカイロである。彼は近代のエジプトの日常生活を捉えることを目指していたが、それに向けて文化的な相違点を強調することを選択した。
例えば、カンテラ職人が女性の顔にベールを通して触れているのは、結婚するまで女性の顔を見ることが禁止されていたからである。また、彼らの背後にいるのは、エジプト人に鞭を振るうイギリス人である。
このことから、ハントが単に面白おかしくエジプトを描こうとしていたのではないことが分かる。
ハントの画法の特徴
ハントの絵画は細部まで注意が行き届いており、鮮やかな色使いと複雑に組み込まれた象徴的要素が特徴的である。
ハントは自らの画法を形成するにあたって、美術評論家のジョン・ラスキンと、歴史家・評論家のトーマス・カーライルの著作に大きな影響を受けていた。ラスキンとカーライルは、世界が視覚的な記号により成り立っていると主張し、ラファエル前派の思想的背景にも大きな影響を与えた。
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