イーディス・ホルマン・ハント婦人の肖像

《イーディス・ホルマン・ハント婦人の肖像》は、イギリス人の画家であり、ラファエル前派を1848年に創始した美術家の一人である、ウィリアム・ホルマン・ハントによる絵画である。

イーディスとの禁じられた関係

イーディス・ホルマン・ハント婦人は、ハントの二人目の妻である。

イーディスはハント一人目の妻であるファニーの妹であったが、このような関係は当時のイギリスの法律により禁止されていた。そのため、二人はヨーロッパ本土で結婚することを強いられた。

作品の特徴

ハントは本作において、イーディスを身体的に正確に描くことよりも、精神的な要素を表現することにこだわっている。

本作でイーディスのとっているポーズは、ハントが1883年から1884年にかけて制作した大きな絵画である《無垢の勝利》に登場する、聖母マリアとほぼ同一である。そのため、本作は《無垢の勝利》の習作として描かれたと推測できる。

《無垢の勝利》の習作として制作された頭部のスケッチは、何作か存在するが、その中でも本作は最も完成作品に近いものである。

ハントの画法の特徴

ハントの絵画は細部まで注意が行き届いており、鮮やかな色使いと複雑に組み込まれた象徴的要素が特徴的である。

ハントは自らの画法を形成するにあたって、美術評論家のジョン・ラスキンと、歴史家・評論家のトーマス・カーライルの著作に大きな影響を受けていた。ラスキンとカーライルは、世界が視覚的な記号により成り立っていると主張し、ラファエル前派の思想的背景にも大きな影響を与えた。