作品概要
《無垢の勝利》は、画家のウィリアム・ホルマン・ハントによって制作された作品。制作年は1883年から1884年で、テート・ブリテンに所蔵されている。

《無垢の勝利》は、イギリス人の画家であり、ラファエル前派を1848年に創始した美術家の一人である、ウィリアム・ホルマン・ハントによる絵画である。
作品のテーマ
ハントが本作のテーマを描き始めたのは、1870年代に旅した聖地・イェルサレムである。
ここに描かれているのは、ヘロド王がベスレヘムに生まれた第一子の男児を全員殺害するよう命令する中、聖母マリア、養父ヨゼフ、そして赤子のイエスが、エジプトに逃亡している場面である。この場面は、マタイによる福音書の2:16-18に記述されている。
制作の経緯
ハントは本作を描き始めた当初、聖家族の三人のみを描く予定であった。しかし、後に殉教者であり「無垢の者たち」と呼ばれる赤子も含めることにした。
その結果、本作の聖家族は、ヘロド王により殺戮された子供たちの精霊に囲まれている。ハントは一行の周りに浮かぶ、シャボン玉のような「幻想的な球体」を描くことによって、「永遠の命の流れ」とその波を彷彿とさせることを目指した。
ハントの画法の特徴
ハントの絵画は細部まで注意が行き届いており、鮮やかな色使いと複雑に組み込まれた象徴的要素が特徴的である。
ハントは自らの画法を形成するにあたって、美術評論家のジョン・ラスキンと、歴史家・評論家のトーマス・カーライルの著作に大きな影響を受けていた。ラスキンとカーライルは、世界が視覚的な記号により成り立っていると主張し、ラファエル前派の思想的背景にも大きな影響を与えた。
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