作品概要
《終油の秘跡》は、画家のニコラ・プッサンによって制作された作品。制作年は1638年から1640年で、フィッツウィリアム美術館に所蔵されている。

この作品には、カトリック教会の儀式に従い、聖油で清められる死にゆく人が描かれている。
プッサンはフランシスコ・バルベリーニ枢機卿に依頼され、もっと以前に死の床の情景を描いた《ゲルマ二クスの死》に着想を得てここに再現した。また、プッサンはローマ、ヴィラアルバーニのメレアグロスの死が表現されている大理石サルコファガスのレリーフからもインスピレーションを受けた。
絵画の構成
構図の中心にいる神父は、一際目立つ黄色の複雑に折り重なったローブを身にまとい、聖杯を手にし、二人の従者を従えている。一人は、蝋燭かたいまつを持ち、もう一人はひざまづき、典礼式文を手にしている。悲しむ人々もまた、古典的な葬儀のレリーフが基盤になっている。深い影にある死にゆく男の後ろには、頭を優しく抱える彼の母親がいる。一方、ベッドの足元にいる彼の妻は、慰めることができないほどの悲嘆にくれる身振りで彼女の顔を覆っている。手を合わせて静かな祈りを捧げている人物は男の娘で、彼女の隣の年老いた男は、おそらく医者か薬屋で、デカンタを青年に渡している。中央のもう一人の女性は深い悲しみで彼女の手を強く握りしめる。そして右端の方にいる給仕は、体重の大部分を片脚にかけて機敏に方向を変え、部屋を出ようとしている。
プッサンの構図
人物は、一段上がったステージで動作が展開されることをほのめかすように、床の正面の縁が故意に露出された舞台のセットのような中に配置されている。この劇作的な効果は、登場人物たちの生き生きとした動作と顔の表情、そして、窓からさす弱い光を圧倒する強く不自然な照明効果により、一層引き立てられた。
遠近法に基づく線は、人物たちを配置するのに役に立ち、また床のタイルや、ドア、窓のデザインや、建築的な奥行きにも強調を加えた。
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