作品概要
《重荷(洗濯女)》は、画家のオノレ・ドーミエによって制作された作品。制作年は1850年から1853年で、エルミタージュ美術館に所蔵されている。

《重荷(洗濯女)》は、諷刺版画家であり油彩画家でもあるオノレ・ドーミエ(1808-1879)によって制作された油彩画である。
洗濯物を担ぐ女
洗濯女あるいは洗濯婦は、身体的、精神的に過度な負担を負った労働をしている貧しい女を象徴している。そんな母親の仕事を、横にいる子供がどうにか手伝おうとしている。女は洗濯物がつめこまれたどっしりと重たい大きな袋を担ぎ、向かい風のなかを進んでいく。そのため、顔は絶望というより、決意に満ちた表情をしている。
洗濯物の重量と強風は、母と子が立ち向かわなければならない大きな力――貧困、腐敗した政府、市民による革命の気運――を暗に示唆している。
働く女性の擁護
光と闇を対比してドラマを生み出す巨匠、ドーミエは、薄暗い街を歩いてくふたりの場面を不気味な感じで描いている。強い光が女と洗濯物にあたっている。女の勇気と崇高な思いがにじみ出ているようだ。対して、影が行く末の見えない子供を包みこんでいる。
ドーミエは、生活苦を強いられて働く女が立ち向かわなければらない困難に目を向けていた。当時、フランスでは、女性が子供を連れて仕事場へ行くことは許されていなかった。熱心な共和党支持者のドーミエは社会に対して強い声明を発して、働く女性と、その子供の権利を擁護した。
油彩画の教育をじゅうぶん受けていないドーミエの絵画は、リトグラフの手法が影響している。この作品もリトグラフの制作時に使うクレヨンに似た絵筆を用いている。女の身体の量感をなめらかな曲線で描いている。また陰鬱で不気味さを感じさせる街並みから一線を画するように、ふたりの輪郭がはっきりと際立っている。
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