作品概要
《突撃する近衛猟騎兵士官》は、画家のテオドール・ジェリコーによって制作された作品。制作年は1812年から1812年で、ルーヴル美術館に所蔵されている。

馬とジェリコー
ロマン主義の先駆者と言われるテオドール・ジェリコーは生涯馬に魅せられた画家である。
彼は1791年に裕福な家に生まれ、幼少期から馬に親しみ、1808年に馬と近代軍事の画家として有名だったカルル・ヴェルネに弟子入りしたが、2年後に「私の1頭の馬は彼の6頭をむさぼり食っただろう」と師を超えたことをほのめかして辞めている。
作品の成り立ち
この作品はナポレオン軍の騎兵隊士官が攻撃の号令をかける瞬間を描いている。注目すべきは刀が下を向いているところであろう。通常は敵に決定的な一打を与えるために上に振り上げている瞬間をとらえた構図が多かったが、この作品では刀が下に向いている。
このことによって、敵がここにもそこにもいるかのような緊張感が伝わってくる。そして恐怖感が馬の目と立ち上がっている姿勢にもはっきりと出ており、戦場における緊迫感を表現している。まさしく個人の感情をダイナミックに表現するロマン主義の先駆けとなった作品である。
出展後のジェリコー
1812年にこの作品で初めてサロンに出展し、金賞を得たが買い手がつかず、特に話題にもならなかった。同じく馬を描いた「戦場から去る負傷した胸甲騎兵士官」で1814年にサロンに出展するもこちらも買い手がつかなかったため、ジェリコーは国民衛兵に志願し一旦画業から離れるが、数年後には代表作となる「メデューズ号の筏」に取り掛かり始めた。
生涯馬が好きだったジェリコーにとって皮肉なことだが、1823年の落馬事故により持病の脊椎結核が悪化し、翌年に32歳という若さで亡くなった。
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