作品概要
《バテシバ》は、画家のフランツ・フォン・シュトゥックによって制作された作品。制作年は1912年から1912年で、アルゼンチン国立美術館に所蔵されている。

多方面で活躍した画家
フランツ・フォン・シュトゥック(1863-1928)はドイツの画家、彫刻家、版画家、及び建築家である。彼はスイスの象徴主義の画家であるアルノルト・ベックリンに影響され、主に神話を絵画のテーマとして用いた。
この作品が公開された頃には、シュトゥックは既にミュンヘンの芸術界の中でも、特に名声のある画家として活躍していた。
女性のエロチシズムとその影を表現
1900年代前半からのシュトゥックの絵画は、不穏な影のあるエロチシズムをもつ、女性の裸体を表現することに集中している。1903年の《負傷したアマゾネス》や1906年の《サロメ》もその一例である。
1912年に描かれた本作の女性は、薄く淡い灰色で描かれており、女性の体のどこか影のある魅惑が強調されている。女性とは対照的に、背景の水面とさざ波は蛍光色に近い、明るい色で表現されている。
作品のテーマ
本作のテーマであるバテシバ(バト・シェバ)は、ヘブライ語聖書に登場するダビデ王の妻、そしてソロモン王の母である。
《サロメ》に登場する黒人の仕いのように、本作でも茶髪のメイドが水から上がるバテシバに仕えている。このメイドは絵画の最前面に位置しており、主人の体を覆い、乾かすための衣を持って待っている。
複数の神話の融合
背景にあるオレンジの夕焼けの空には、ローマ帝国時代に使われたチャリオットであるクワドリガと共に、三つ叉のほこを携えたポセイドンのシルエットが窺える。
シュトゥックはこの作品の中で、幾つかの神話を融合させている。旧約聖書の『サムエル記』に登場するバテシバと共に、異教の海の神であるポセイドンが、バテシバが水浴びをする水を司っている。
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