作品概要
《レースを編む女》は、画家のヨハネス・フェルメールによって制作された作品。制作年は1669年から1670年で、ルーヴル美術館に所蔵されている。

《レースを編む女》は、ヨハネス・フェルメールによって1669-1670年頃に描かれ、現在はフランス・ルーヴル美術館に所蔵されている。この作品は縦24.5×横21cmとフェルメールの絵画の中でも、最も小さい大きさである。また、その抽象的な作風としても知られている。
主題
描かれた黄色いショールを羽織った若い女性は、左手に糸巻きを持ちながら枕にレースを縫っている。この作品がフェルメールの他の代表作品と共通している点は、モデルの動作が的確に描写されていることだ。バロック期のオランダ絵画や文学では、レースを編む姿は女性の美徳の象徴としてよく描かれていた。
熱心に家事に従事することはキリスト教において女性の理想像とされていたからだ。それを明示するかのように、フェルメールのレースを編む女性の手元には聖書と思われる本が置かれている。
象徴的な前景
その一方で、手前の水のように流れる糸や、ぼやけた輪郭の裁縫箱の描写から見てとれるように、フェルメールは前景を抽象的に描いていることがわかる。見ている側の視線は自然と前方画面を通りこし、フォーカスがあたる枕を縫う女性へと向けられる。
これは、フェルメールがカメラ・オブスクラを使用したからだと言われている。前景をぼやかすように描き、被写界深度を表現するこの技法は、強い明暗で特徴づけられるバロック期のオランダ絵画には稀な技法であった。この作品とよく比較されるカスパル・ネッチェの《レースを編む女》(1662)と比べてみても、その違いは明らかだ。
フェルメールは、伝統に従うだけでなく、新しい技法を用いることで自らの芸術性を表現していたと言える。
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