作品概要
《三等車》は、画家のオノレ・ドーミエによって制作された作品。制作年は1862年から1864年で、メトロポリタン美術館に所蔵されている。

ドーミエは19世紀半ばのパリの近代的な都市生活における産業化の影響を記録していた。三等客車の乗客の苦難と静寂を表している。
他の作品と同様、《三等客車》からも、ドーミエがパリの労働者階級の生活に関心を持っていたことがわかる。三等車は車窓から光が入り、人でごった返し、汚い。あるのは固い椅子が並べられている。座席は、一等、二等の席が買えなかった者で埋め尽くされている。
三等車の乗客
乳飲み子を抱えた母親、バスケットの取っ手を握りしめる年老いた女、ぐっすり眠る少年。三世代が同時に座っている。まるで人生の縮図を表しているようだ。なかでも、注目すべきは成人した男性がいないことだ。これは女性が自分の世界を切り開こうとしてることを示唆している。
母親の顔は優しいが、年老いた女の表情は疲れ切っており、長い人生のなかで経験したであろう苦難を物語っている。老婆の抜け目のないまなざしは、鑑賞者をじっと見つめている。後方には、有象無象の男女の姿が描かれている。
数少ない絵画の依頼
1840年代からドーミエは鉄道の乗客の光景を描きつづけていた。版画家として身を立てた彼だが、画家として日の目を見ることはなかった。
ドーミエは、ウィリアム・トーマス・ウォルターから、《一等車》、《二等車》の連作として《三等車を描くよう依頼を受けた。《三等車》は、彼が依頼を受けて制作した数少ない絵画である。
本作は、1929年ハヴマイヤー夫人が遺贈したコレクションである。また同様のタイトルの作品がカナダのナショナル・ギャラリーにも所蔵されている。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。