作品概要
《絶望(自画像)》は、画家のギュスターヴ・クールベによって制作された作品。制作年は1843年から1845年で、個人に所蔵されている。

制作の背景
ギュスターヴ・クールベは19世紀のパイオニア的画家であり、伝統を重んじる学術界と、ブルジョア社会の慣習から一度は拒絶された画家である。
《絶望(自画像)》は1843-1845年に描かれたものであるが、クールベの1840年代からの初期の作品の多くは自画像である。本格的な写実主義の画法をまだ彼が確立していなかったため、自画像の大半がロマン主義の学校で教えられたとおり、なめらかな線とダイナミックな形を特徴としたロマン主義の画法で描かれている。彼は自分のことを一度もロマン主義の画家だと思ったことはなかったが、実に良くロマン主義の手法をマスターしていた。
かつて自分自身のことを「フランスで最もうぬぼれて、傲慢な人間だ」と述べているが、この絵を見た人はタイトルが示す「絶望」を感じると同時に、彼の大胆・過激で野心的かつ意思の強い人間性を感じるだろう。
独自の道を歩み始めたクールベ
やがて彼はロマン主義の大げさな表現に違和感を覚えるようになり、「画家は自分の周りを見たままに描くべき」と主張するようになった。彼は努めて当時の大衆の好みから離れ、日常生活をありのまま表現することによって、今までの慣習を変えようとした。妥協を許さない彼の率直な芸術活動は、同時期のパリの画家たちから孤立を招くことになったため、個展を開くようになる。しかし次第にこのような彼の活動は写実主義・新ロマン主義の若い画家たちから支援を得るようになった。
この肖像画からも感じられる彼の意思の強さが新たな画法を確立させ、型にはまった伝統形式に抵抗し、美術史を変えることとなった。
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