作品概要
《紳士とワインを飲む女》は、画家のヨハネス・フェルメールによって制作された作品。制作年は1660年から1660年で、ベルリン絵画館に所蔵されている。

紳士とワインを飲む女は1660年にヨハネス・フェルメールによって描かれベルリンの絵画館に所蔵されている。
その絵には室内にいる座った女性と立った男が描かれている。また、1650年の終わりにピーテル・デ・ホーホが発展させた風俗画の様式がみられる。また、その絵の中は明るく照らされ、室内は広々としている一方、その建築空間は厳格に規定されている。
人物は前方ではなく、中間に位置している。フェルメールがこの作品を描いたのは27歳の時であった。美術評論家のワルター・リトケは、「今までの美術的技法の分析をもって『紳士とワインを飲む女』のような絵画の純粋な美しさ、そしてたぐいまれな上品さを評することはできない。恐らく、フェルメールの最初の熟練した作品の一つである」と評した。
テーブルの周りでワインを飲む人々と、ワインを飲む一人の女性の描写は、ピーテル・デ・ホーホの描いた作品から直接取り入れられている。しかし、フェルメールの作品はピーテル・デ・ホーホの描写よりもエレガントで上流階級をイメージさせるものとなっている。衣服、テーブルクロスの柄、後ろに掛けられた金箔の額縁、紋章が描かれたステンドグラス、すべてが裕福であると感じさせる。その場面は恐らく一種の求愛を表現している。
しかし、二人によって表現されている役割は明らかではない。女性はそのワインを飲み干し、男性はワインを注ぎ足そうとしている。まるで、男性は彼女を酔わせようとしているようである。楽器の一つ、シターンが楽譜とともに椅子に置かれている。彼の初期の絵に比べ、『紳士とワインを飲む女』の筆使いは落ち着いており、人々の顔と衣服はなめらかな輪郭で描写されている。テーブルクロスのタペストリーと窓ガラスは直線状の筆使いで非常に細かく表現されている。
当時、ピーテル・デ・ホーホの技法を発達させようとしたオランダの画家は、フェルメールだけではなかった。ヤン・スティーン、ヘラルト・テル・ボルフ、フランス・ファン・ミーリスもまた技法を洗練させていった。その絵画は他のフェルメールの作品と似た要素を持つ。
『ワイングラスを持つ娘』(1659-1660)は、2人の男性を描いているが、『紳士とワインを飲む女』では同じように、女性はワイングラスを持ちテーブルに腰掛けている。またタイル張りの床とステンドグラスも両方の絵において非常に似ている。同じワインの容器は、フェルメールの初期の作品、『眠る女』(1657)でも描かれている。
『紳士とワインを飲む女』は過渡期の作品で、フェルメールの最高傑作とはみなされていない。美術評論家のローレンス・ゴウィングは、ハブリエル・メツーの『デュエット』に比べて、「社交的流暢性を欠き、媚を売る創作力である」と評している。
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