作品概要
《王女マリー=テレーズと王太子ルイ=ジョゼフ》は、画家のエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランによって制作された作品。制作年は1784年から1784年で、ヴェルサイユ宮殿美術館に所蔵されている。

フランス国王の子供たち
この肖像画は、フランス国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットの娘マリー=テレーズ(1778-1851)と弟のルイ=ジョゼフ(1781-1789)が庭に並んで座っている様子を描いたもの。宮廷画家としてマリー・アントワネットの信頼を得ていたヴィジェ=ルブランが、アントワネットに依頼されて制作したもの。
ルイ=ジョゼフはサテンのセーラー服を着て、サン=ルイ勲章のシュヴァリエの十字架とサン=テスプリ勲章のコルドン・ブルー(青い斜め掛けの帯)を身に付けている。勲章は、国王の第一王子として生まれた彼が、出生時に与えられたものである。
マリー=テレーズのほうは、当時流行した縞模様のサテンドレスに、子供用に小さく作られた麦わら帽子とフィシュー(スカーフ)を着用している。彼女は、優しいまなざしで隣に座る弟を見つめている。二人の服装は大人びて見えるが、当時は子供も大人と同じように着飾るのが普通だった。
この作品には、フランソワ=ユベール・ドルーエの《アルトワ伯爵と妹クロチルドの肖像》の影響を見ることができる。宮廷内の人工的な空間とは対照的に、自然の中に子供たちを置くことで、彼らの衣装の豪華さが際立っている。
悲劇的な運命
この肖像画が描かれてから5年後の1789年、もともと病弱だったルイ=ジョゼフは結核にかかり、わずか7歳で死去した。姉のマリー=テレーズはフランス革命下で2年近く幽閉されたのち、ヨーロッパ各地で亡命生活を送った。一時フランスに帰国したこともあったが、最終的にはオーストリアの城で72歳で没した。
この肖像画は、フランス革命が本格化する1789年の5年前、1784年に描かれている。その後の彼らの悲劇的な運命を感じさせない、姉弟愛にあふれた作品となっている。
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