作品概要
《ヴィジェ=ルブラン夫人と娘ジュリー》は、画家のエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランによって制作された作品。制作年は1786年から1786年で、ルーヴル美術館に所蔵されている。

母子の肖像
ヴィジェ=ルブランは18世紀フランスの肖像画家で、マリー・アントワネットをはじめとする多くの貴族たちの肖像画を残したことで有名。
この絵画は、ヴィジェ=ルブランが自身とその娘ジュリーを描いたもので、1787年にパリのサロンで発表された。ヴィジェ=ルブランは古典的で優雅なドレスを身にまとい、娘も同じく白のドレスを着て母親の腕に抱かれている。母性と優しさがにじみ出る絵画である。
この母子像は、ルソーが1762年に刊行した『エミール』によって、当時のフランスで子供や育児に対する関心が高まっていたことにも呼応している。ルソーは本の中で、上流階級の子育てを批判し、子供を田舎で生活させることなどを説いたが、ヴィジェ=ルブランは上流階級の中にも母親の愛情はしっかりと存在していることをこの作品で示したといえる。
絵画の慣習を破った画家
この作品がサロンで発表された時、人々は唖然とした。なぜなら絵画の中でヴィジェ=ルブランが歯を見せて微笑んでいたからである。これは西洋絵画の規範を外れるものであった。当時、歯を見せて笑う表情は風俗画特有のもので、ヴィジェ=ルブランのようなブルジョワの絵画とは無縁であった。
ヴィジェ=ルブランは慣習にとらわれない作品を描くのが好きだった。この絵画のほかにも、王妃マリー・アントワネットを当時流行のモスリンのドレスを着た姿で描いて、論争を起こしている。
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